O- Ogasawara

9年前、小笠原諸島に行った。映画『グランブルー』を観てジャック・マイヨールに憧れギリシャに行き、やっぱイルカだよ!というわけで小笠原に。小笠原は東京都であるが船でしかいけない遠いところ。船は28時間の長旅。竹芝桟橋から出航。そしてその竹芝桟橋で目の前に外人さんが・・と思ったらジャック・マイヨール本人だった!!!え〜〜〜〜!?一緒の船で小笠原に行くことになるなんて、なんという偶然。元々の目的がジャックなんだから、そのジャックがジャックが・・・。すごいことだーーーー。
船の中はほとんどがダイバーなので、ジャックがいることで興奮のるつぼ。サインやら写真やら頼む人が続出。ジャックが連れている若い彼女はいい加減にして!と立腹状態。でも一緒に写真撮りたい・・こんなチャンス二度とない・・だけど、今はいかん。待て待て、なにしろ時間はたっぷりあるんだ。その後も何度かジャックを見かけたが我慢。
・・長い航海の末ようやく父島到着。船は岸壁に着いてもなかなか降りられない。ジャックも甲板から島をみつめている。今がチャンスだ!今しかない!失礼のないように持ち前の日本語で「写真一緒に・・いいですか?」声をかけるとジャックは快くOKしてくれた。なんという幸せ。
父島滞在中、一度だけジャックの泳ぎをすぐそばで見ることができた。足を患っていたようで歩くときは松葉杖を使っていたのに水の中はまさにジャックの世界。ゆっくりと水に溶け込んで流れていくような泳ぎだった。マスクをつけて後ろから覗く私。怪しい・・
約10日間の滞在で帰りの船も一緒だった。私は英語でジャックと喋るというのは早々に諦め、ジャックの友人ダイバーである成田さんと喋るぞー、と、ひそかに思っていた。
船旅というのは乗り合わせたもの同士親近感のようなものも湧き、鳥や星を見ては種類を聞いたり、飛行機では味わえない良さがある。明け方甲板で本を読んでいると隣りに写真を撮ってるおっさんが座っていて、そこに成田さんがちょうどやって来て、成田さんとおっさんが話し始め、私もなんとなく話に入るシチュエーションになった。チャンス到来!
成田さんはいろいろジャックの話を聞かせてくれた。「ジャックは水族館にいるイルカを海に帰すためにいろいろなことをやっていて、イルカは賢いので時間を決めてこの時間にやって来てショーを見せてくれとお願いすればそれが可能で、実際にアメリカにはそういうところがあるんですよ」「今、地球の海は悲惨な状況であるけれど、それを止めることは不可能だし悲しいけれど受け止めるしか出来ない」とジャックは言うけど、周りの人は「ジャックが今までやってきたことを若い人たちに話すことで、それはちっぽけであるけれど、海を救うひとつの手段になるんではないか?」と言っているんです」ジャックに「何の為に海に潜るのか?」と尋ねると「それは愛と友情の為だ」と答えるそうだ。ジャックったらさすがフランス人。成田さんの夢はイルカと一緒にカリブ海に沈んだ海賊船の宝探しをすることで、「イルカにはそれが出来る能力があるんですよ。それをイルカと楽しみながらやりたいね」と、子供のように目をキラキラ輝かせて語った。この間約2時間、私は頷くだけ、成田さんは休むことなく語り続けたのだった。ありがたいお話伺えてすごい満足。講演会行ったみたい。

そして3年前のクリスマス、ジャックは自ら命を絶ってしまった・・・
今年私は9年ぶりに小笠原に行く。